企業概要と事業セグメントのおさらい
楽天(Rakuten Group, Inc./証券コード:4755)は、ネット通販(楽天市場)を起点に、金融(カード・銀行・証券など)、モバイル通信(楽天モバイル)、デジタルコンテンツなど多角事業を展開する複合型プラットフォーマーです。
収益構造は複数セグメントにまたがっており、特に注目されるのは以下の3分野:
- Internet Services(EC/広告/メディア等)
- FinTech(カード・銀行・証券・保険など金融サービス)
- Mobile
IRサイト上では、これら各セグメント別の売上・営業利益推移も公表されています。
決算ハイライト:最近の動きと注目点
◼ 2025年度第2四半期(1〜6月期)
- 売上収益(連結ベース)は 5,964億円(前年同期比 +11.0%増) を記録。第2四半期では過去最高水準。
- Non-GAAPベースの営業利益(調整後営業利益)は 201億円 と、2019年以降初めての第2四半期黒字を達成。
- IFRS営業利益も 88億円 と改善。前年同期から約272億円の改善。
- EBITDA(営業活動によるキャッシュ創出力を示す指標)は 1,032億円(前年同期比 +54.5%) と過去最高。
このように、売上・利益・キャッシュ創出力のいずれにおいても改善傾向が鮮明になってきています。
◼ 2024年度通期決算:5年ぶりに黒字化
- 2024年度通年では、非GAAP(調整後)営業利益が約 70億円 の黒字に転換。前年から約160億円の改善。
- IFRS基準営業利益も 530億円 程度と大きく改善。
- EBITDAは 3,260億円 と前年比 +120%増、キャッシュ創出能力が強化されたことを示す結果。
- これにより、グループとして 5年ぶりの通年黒字化 を果たした点が財務的な転機と評価されています。
この“黒字化”という結果は、楽天がこれまで積み上げてきた多角投資・コスト改革の成果が見え始めた節目です。
◼ 利益構造の改善と課題の両面
- 直近では 楽天モバイル事業 の収益改善が目立ち、第2四半期ではモバイル単体でも EBITDA 稼働化を実現したとの報告があります。
- 一方で、純利益ベースでは赤字が続いており、4〜6月期(第2四半期)連結最終損益は 509億円の赤字。前年同期(335億円赤字)から赤字幅拡大。
- ただし、営業利益率改善はみられており、赤字幅拡大ながらも 売上営業損益率 は前年同期の –3.4% → +1.5% に改善。
- バランスシート面では、負債比率(Debt to Equity)が過去5年で大幅に上昇しており、財務的な健全性リスクを指摘する声も。
このように、利益の改善方向とともに、収益のブレや財務リスクも表面化しています。
直近3年のトレンド比較
以下は、楽天の近年の決算動向をざっと眺めたトレンド要点です。
| 年度 / 四半期 | 売上・収益傾向 | 利益傾向 | 特記トレンド |
|---|---|---|---|
| 2022-2023年 | 売上は拡大傾向維持 | 赤字継続、改善余地あり | モバイル投資の重荷が利益を圧迫 |
| 2023年末 → 2024年度 | 黒字転換へ動く | 営業利益・EBITDAが大幅改善 | コスト構造見直しとモバイル改善が寄与 |
| 2025年第2四半期 | 売上は過去最高ペース | 営利・営業キャッシュ創出力改善 | 第2四半期ベースでNon-GAAP黒字化達成 |
このような流れを見ると、楽天は「赤字依存」から「収益モデル確立」へのフェーズに入っていることが示唆されます。
強み・リスク・注目ポイント
✅ 強み
- 事業の多角性によるリスク分散力
EC・FinTech・モバイルと複数分野で収益基盤を持つことで、どこかの分野が低迷しても他分野で補える可能性を持つ。 - キャッシュ創出力の向上
EBITDAの改善は、営業外要因を除いた本質的な利益創出力回復を意味し、投資余力を再構築し得る。 - モバイル収益転換の兆し
通信事業で収益改善を見せ始めており、グループの成長ドライバーの一角に成る期待。 - 成長性と戦略的変換力
ECプラットフォーム、金融サービス、通信という楽天のエコシステムを中心に、“顧客ロイヤルティ”を武器にできる点。
⚠ リスク・留意点
- 純利益赤字の継続
営業レベルでは改善しても、最終利益まで届くまでにはなお時間がかかる構造。 - 負債と財務リスク
負債比率の悪化や債務返済スケジュールが重くのしかかる可能性。 - モバイル事業依存リスク
期待が高い分、モバイルの失敗や利用者伸び悩みが大きな逆風となる。 - 収益の振れ幅
複合事業ゆえ、各セグメントの良し悪しがグループ全体に影響しやすい。
編集部まとめ/未来予測
楽天は、これまで赤字の“借金フェーズ”を抜け出し、収益モデル転換に向けた第一歩を着実に踏み出しています。
黒字転換・改善傾向というポジティブな方向を見せつつ、最終利益の黒字化・収益の安定化をどう実現するかが今後の注目点となるでしょう。
就活生や企業研究者にとって、楽天の事業構成や決算変化を見る意味は、
「変化を読み取り、選択できるかどうか」にあります。
「赤字すら資源に変える。挑戦できる体力を持つ企業」
この見えない成長力を有効に活用できる人材こそ、今後の楽天で求められる存在です。














