「写真の会社」から「未来の会社」へ
かつて“カメラフィルムの代名詞”と呼ばれた富士フイルム。
しかし、デジタル化の波により主力事業であった写真フィルム市場が急速に縮小した後も、
同社は大胆な事業転換で新たな成長を遂げました。
「Never Stop」─止まらない挑戦が、富士フイルムのDNA。
現在では、医療・ライフサイエンス・ヘルスケア・高機能素材・映像・デジタル印刷など、
“写真技術を超えた総合テクノロジー企業”として世界をリードしています。
企業概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 社名 | 富士フイルムホールディングス株式会社(FUJIFILM Holdings Corporation) |
| 設立 | 1934年(昭和9年) |
| 本社所在地 | 東京都港区赤坂9丁目7番3号(東京ミッドタウン) |
| グループ会社数 | 約300社(全世界) |
| 事業内容 | イメージング、ヘルスケア、マテリアルズ、ビジネスイノベーション事業など |
| 従業員数 | 約72,000人(グループ連結) |
| スローガン | “Value from Innovation” |
| 公式サイト | https://holdings.fujifilm.com/ |
富士フイルムの強み
① 写真で培った「コア技術の転用力」
富士フイルムの原点は、“写真フィルムの化学技術”。
しかしその化学・光学・精密コーティング・ナノ加工技術を応用し、
現在では医療・化粧品・ディスプレイ・バッテリー材料など、まったく異なる分野で成果を上げています。
📌 代表例
- 医療機器(内視鏡・X線診断システムなど)
- バイオ医薬品の開発支援(FUJIFILM Diosynth Biotechnologies)
- スキンケアブランド「ASTALIFT(アスタリフト)」
- フラットパネルディスプレイ用フィルム・半導体材料
🎯 強みの本質
「1つの技術を“使い切る”企業」
—写真フィルム技術が、医療・美容・電子部材に転生する。
② 医療・ライフサイエンス分野への圧倒的展開
医療・ヘルスケア領域は、現在の富士フイルムの成長エンジンです。
- 診断 × 治療 × 予防のすべてをカバーする総合ソリューションを構築。
- 内視鏡システム・超音波診断・AI画像解析・創薬支援などに注力。
- コロナ禍ではワクチン製造・抗体医薬の生産支援を行い、国際的評価を獲得。
かつて「写真を撮る会社」だった富士フイルムが、
今は「命を救う会社」に進化している。
③ ESG・サステナビリティ経営の先進性
富士フイルムは、社会課題の解決を企業成長の軸に置くサステナブル経営の先駆者。
- 「サステナブル・バリュープラン2030」を掲げ、環境・健康・デジタル変革を重点分野に設定。
- CO₂削減・水資源管理・廃棄物リサイクルなどで国際的評価を獲得。
- 「写真を守る技術」が、今は「地球を守る技術」へと進化している。
🎯 強みの本質
“利益”と“社会価値”を両立させる経営モデルを確立。
④ グローバル展開と安定した経営基盤
世界200以上の国と地域でビジネスを展開。
医療・マテリアル分野を中心に、海外売上比率は60%を超えています。
- 医療機器事業はアメリカ・欧州で高いシェアを持ち、
- バイオCDMO(受託製造)では世界トップクラスの技術力を確立。
- 為替変動・景気変動に左右されにくい多角経営を実現。
🎯 強みの本質
「多様な事業ポートフォリオで、不況にも強い企業体質」。
⑤ 人を育てる“研究者文化”と挑戦の風土
富士フイルムの社風は、技術者・研究者を尊重する文化が根付いています。
- 社員の平均勤続年数は20年以上。長期的な育成環境が整備。
- 「自由な提案」と「挑戦を称える」カルチャー。
- 多様性(D&I)にも積極的で、海外・女性・若手リーダーが活躍中。
「現場から生まれるイノベーション」
—それが富士フイルムの最大の競争力です。
編集部まとめ
富士フイルムは、単なる“写真メーカーの生き残り”ではありません。
むしろ、時代の変化を最も上手に味方にした企業の一つです。
「変える勇気が、会社を生かす」
写真フィルムで培った技術を、医療・バイオ・環境へと昇華させた富士フイルム。
そこには、“過去を捨てずに進化する”日本企業の理想的な姿があります。
🧭 富士フイルムの5大強みまとめ
| 分野 | 強み | 具体例 |
|---|---|---|
| 技術 | 写真由来の化学・光学・材料技術 | 医療機器、化粧品、半導体材料などへ応用 |
| 事業 | 多角化・高収益構造 | 医療・マテリアル・映像など複数の成長軸 |
| 経営 | サステナブル×利益両立 | 環境と成長を同時追求する中長期戦略 |
| ブランド | グローバル信頼性 | 医療・研究・映像で世界的認知度 |
| 組織 | 技術者文化と挑戦風土 | 現場主導のイノベーションが定着 |
📸 象徴するブランド:INSTAX(チェキ)
富士フイルムのもう一つの成功例が、インスタントカメラ「チェキ(INSTAX)」シリーズ。
デジタル時代に逆行する“アナログ写真の温かさ”が、若者や海外ファンの心をつかみ、
世界販売台数は累計7,000万台を突破(2024年時点)。
“撮る”から“贈る”へ。
写真をコミュニケーションに変えた富士フイルムの象徴。
✍ 編集部コメント
富士フイルムは「技術の会社」でありながら、「人の想いを形にする会社」でもあります。
変化に挑み続けたその姿勢は、まさに日本企業のレジリエンスの象徴。
「過去を糧に、未来を描く。」
富士フイルムは、これからも“社会の進化を支える企業”として、
世界を静かに、しかし確かに変え続けていくでしょう。


















