「働く」を再定義するコミュニケーション企業 チャットワーク株式会社の歩みと挑戦

変化の先を見据えて:社名変更と戦略転換

2004年の創業以来、ビジネスチャット「Chatwork(チャットワーク)」を基軸に事業を展開してきたチャットワーク株式会社は、2024年7月1日付で 株式会社 kubell(クベル) に社名を変更しました。

この名称変更は、単なるリブランディングにとどまらず、「コミュニケーション基盤」から一歩踏み込み、BPaaS(Business Process as a Service) による業務プロセスそのものの支援を目指す企業へと舵を切る象徴的な転機です。

「kubell」という社名は、働く人々の内側にある“火”に、薪を「くべる(=支える・育てる)」という想いを込めたもの。チャットワークで築いた顧客基盤を礎に、DX支援・業務改善といった領域に事業範囲を拡張する意図がうかがえます。

会社概要と組織構成

項目内容
社名株式会社 kubell(旧:チャットワーク株式会社)
設立2004年11月11日(創業:2000年7月15日)
資本金約27.6億円(2024年3月時点)
従業員数約465名(2024年3月時点)
本社所在地東京都港区(WeWork 乃木坂 等)
代表取締役山本 正喜(CEO)
事業内容ビジネスチャット事業、BPaaS、周辺サービス開発運営

また、取締役・執行役員体制には、CFO・COOなど多様なバックグラウンドを持つ人材が名を連ねており、事業拡大を支える組織体制づくりにも力を入れています。

主力サービス「Chatwork」とその強み

チャットワーク(Chatwork)は、日本国内で高い認知を得るビジネスチャットサービスです。

主な機能と特徴

  • グループチャット(社内・社外双方に対応)
  • ファイル共有・検索機能
  • タスク管理機能(誰がいつまでに何をするか見える化)
  • ビデオ/音声通話機能(リモート会議対応)
  • API連携対応(他ツールとの統合性)

こうした機能を通じて、従来のメールや電話・会議に依存していた働き方を、より軽快で情報流通の速いスタイルに変えることを目指しています。

利用規模と導入実績

社名変更前の発表では、有料契約ユーザーのうち約8割が従業員数300名以下の中小企業であるとの情報もあり、堅実な利用基盤が見て取れます。

また、国内最大級のビジネスチャットとして、利用者数No.1の実績も掲げられています。

経営理念と組織文化

チャットワーク(kubell)は、「働くをもっと楽しく、創造的に」をミッションに掲げ、社員と顧客双方に対して“幸せ”を追求する企業姿勢を明快に示しています。

東京都の紹介コンテンツでは、同社が掲げるユニークな経営方針の一部として、「電話を使わない」「社員をクビにしない」「顧客に会わない」など、常識から外れるように思えるが徹底したルールをもとに、社員第一主義の経営を実践してきた歴史も紹介されています。

また、柔軟な勤務制度やコミュニケーション重視の組織運営、人材確保・離職防止策にも注力しており、働き方改革や価値観重視の経営を体現してきた企業でもあります。

将来展望と課題

社名変更と同時に打ち出された中期経営計画では、「中小企業No.1 BPaaSカンパニー」を中期ビジョンに掲げ、Chatwork(チャットワーク)を足がかりに、より深い業務支援サービスへと進化を試みています。

ただし、BPaaS領域は既存の業務プロセスや競合他社の領域と重複する可能性もあるため、技術力と顧客理解の両輪で差別化を図る必要があります。また、中小企業ユーザーが多いという構成を考えると、低コスト運用とサポート体制の拡充も鍵となるでしょう。

さらに、グローバル展開という観点では、日本発のチャット基盤を世界水準で通用させるためには、国外拠点や多言語対応、海外市場の文化的適応にも挑戦が残ります。過去にはシリコンバレー展開も模索した経緯が語られています。

まとめ

チャットワーク株式会社(現:株式会社kubell)は、単なるチャットツール提供企業から、働く現場そのものを支えるDX基盤企業へと進化しつつある注目企業です。社名変更を契機に掲げた「BPaaS経営」は、従来のSaaS提供モデルを超える挑戦であり、今後の動向を追う価値があります。